suetumuhanaのブログ

日常のエッセイ

彼女が神様に呼び出されたのは夏だった

映画を観るのが私たちの楽しみのひとつだった。二人とも映画が好きでその上そうしゃべることもなく時間が過ごせるしその後今日の映画がどうだったこうだったと感想の時間がまたお楽しみだった。二人はその日「ある愛の歌」をみた。雪のニューヨークはなんだか寒さがきりっとして肌を刺す空気が気持ちよさそうだった。いつものようにカウンターだけの酒場で当時はやっていたブラッディマリーやソルティドッグなんかをいただきながら恋人が亡くなるという事に関してあれやこれやと時間を潰したものだ。「ある愛の歌」なんて古い映画でそれでも二人がその後鴨川を歩いたりお酒を飲んだりするにはうってつけで京都の碁盤の目と細い通りがいつまでも映画の余韻をくゆらしていたものだ。もうその時、時間をともにした人はほんとに神様に召されてしまって当時そんなことになるとは思ってもみなかった私はいつまでも鴨川と碁盤の目に抱かれて夢から覚めないようなことになってしまった。