suetumuhanaのブログ

日常のエッセイ

京都の秋

嵐山というと観光地の真っただ中という感じか満載です。ところが嵯峨野というとちょっと奥まった静かな場所という感じですよね。さらに奥嵯峨というともうこれはひっそりとした人里はなれたところです。私はこの奥嵯峨に大変好きなところがあります。落柿舎からまだずっと奥の祇王寺というお寺のさらに上にある滝口寺です。ほんとに何にもないひなびた庵という言葉がぴったりの建物です。あまり観光の方もいません。ただ庭に面した畳に座って時間を過ごすだけです。このお寺、35年ほど昔、いつも、ひとりおばあさんがちょこんとたたずんでられて訪問者に「滝口入道と横笛」の悲恋の物語を語ってくださいました。だいたい15分くらいのお話だったと思います。私はその同じ話を幾度も聞きにこのお寺を訪ねました。もうとっくにおばあさんはいらっしゃいませんが私は今も時折この思い出をたどりにこのお寺に行きます。