suetumuhanaのブログ

日常のエッセイ

昔、パイ屋さんでアルバイトをしていた

大きなビルの地階にあるちょっと有名なパイ屋さんでアルバイトをしていました。パイのなまえが全部フランス語の日本語読みでなかなか覚えられませんでした。今のように、小さなタブレットに入力などということはなくて、小さなメモ用紙にパイのなまえと「正」の字を書いていって個数を中に伝えるのでした。このアルバイトの休憩時間に近くのコーヒーショップによく行きました。狭い階段を上ったカウンターが5席ほどの店でした。マスターはコーヒー豆を一杯分だけ挽いて布ドリップで入れてくれます。文字通り挽きたての味でした。このマスターは以前タクシーの運転手をされていたそうで、でも家庭の話は全く聞きませんでした。「上手なひとが淹れた布ドリップが一番おいしいコーヒー」というのが彼の信念でした。そのころはちょっとはコーヒーの味がわかったつもりでブラックの「グァテマラ」をいつも口にしては酸味と苦みがいいなぁなどと思っていたものです。