suetumuhanaのブログ

日常のエッセイ

右足一歩前

サークルの折々、例えば試合の後だとか合宿の打ち上げの日だとかには必ずコンパがありました。そのころの「コンパ」という言葉は「みんなで飲み会」の別名で今でいうような男女の飲み会ではありませんでした。特にサークルでは上級生から下級生まで時にはOBやOGも参加の大盛り上がり大会です。ジュースなんか出てきません。そんなにおいしくないぬるく燗をした日本酒とビールのみで皆で鍋をつついてそれこそそのころはやった言葉で「酒池肉林、阿鼻叫喚」です。当時はコンパばかり受け付ける宴会屋さんがあり玄関にはずらーっと学校名とゼミあるいはサークルのなまえの看板が並んでいました。旅館の出迎え看板のように大きくはなかったので帰り際に酔った勢いでその看板をふところに入れて帰るやからが必ずいました。そんなコンパの締めに行う儀式のようなものがみんなで肩を組んで大広間いっぱいに輪になったところで幹事の「右足一歩前」の掛け声とともに「おぅっ」と足を出して肩を揺らしながら歌う校歌と応援歌とそれにサークルの歌なのです。

ダッフルコート

私たちの世代はメンズクラブの洗礼を中学校の頃に受け、「ポパイ」と「オリーブ」を参考書のようにして学生生活を送っていました。すっかりアイビーファッション信者になったわたしのダッフルコートはネイビーブルーでした。当時のダッフルコートは大変重たくてそれもブレザーの上にはおるものですからもう時間がたつと肩がこるような代物でした。それで二人でダッフルコートを着て冬の京都を歩くんです。ネイビーブルーとカーキ色のダッフルコートで三年坂を歩いて四条大橋を渡って古い喫茶店「築地」の玄関をカランカランと入っていくととても温かいウィンナーコーヒーを飲むのがお決まりの道順です。

プレゼントはオルゴール

近所にオルゴールの専門店がありました。スイスオルゴールの専門店で音色が大変美しくて外の装飾も色違いの木材を使って象嵌をほどこしてあります。ちょっと高価なもので予算をオーバーしたところをそこの店主さんが私と同じ学校の卒業生だということで少々値引きなどしていただいてお気に入りを手に入れました。ところがそれからしばらくしてお店の移転のお知らせが届きました。場所は遠くなりましたがもう一度お店を訪ねてみました。そこで悲しいお話を聞きました。店主さんが飛行機事故で亡くなられて今度の店主さんはその妹さんでした。そんなこともあって私はちょくちょくそのお店にオルゴールの音色を聴きに行きました。ある日友人を誘ってそこにいたときご当地ローカル局のラジオカーが来ていました。よくラジオで聞くレポーターさんが来店されていました。さんざんしゃべった後その放送局までその車に乗せていただいて帰ってきました。